中古で買ったトラックや社用車、アパート。「減価償却は新品と同じ年数でいいのだろうか」——実はこのひと言、かなりもったいない勘違いかもしれません。中古資産には、耐用年数をぐっと短くできる計算方法が用意されているからです。
そもそも中古資産の「簡便法」とは
新品の固定資産には、種類ごとに「法定耐用年数」が決められています。木造の住宅用建物なら22年、普通乗用車なら6年、といった具合です。
ところが中古で買った資産は、すでに何年か使われた状態です。残りの寿命はもっと短いはずですから、税法では中古資産を新品の法定年数より短い年数で償却することを認めています。
方法は2つあります。1つは「あと何年使えるか」を自分で見積もる方法(見積法)ですが、これを客観的に説明するのは簡単ではありません。そこでほとんどの実務で使われるのが、法定耐用年数と経過年数だけで機械的に年数を出す「簡便法」です。
- 法定年数をすべて過ぎている資産 → 法定耐用年数 × 20%
- 一部だけ過ぎている資産 →(法定耐用年数 − 経過年数)+経過年数 × 20%
- 計算結果の1年未満は切り捨て、2年未満になるときは最低2年
設例:中古トラックとアパートを取得したKさん
設例(フィクション)
年商1.8億円で運送業を営むD社。代表のKさん(50代後半)は、事業拡大のために中古トラックを1台、そして従業員寮にする築12年の中古木造アパートを取得しました。取得価額はトラックが180万円、アパートは建物部分で1,600万円です。
Kさんは当初、「償却する年数は新品と同じでいい」と思い込み、トラックもアパートも新品の法定年数のまま計算しようとしていました。しかしこれはかなり損な選択です。中古資産こそ簡便法の出番で、新品扱いのままでは初期の経費が薄くなり、目先の利益と税負担が膨らんでしまいます。
実際に計算するとこう変わる
Kさんの中古木造アパートで考えてみましょう。木造住宅の法定耐用年数は22年、すでに築12年が経過しています。簡便法に当てはめると、(22年-12年)+12年×20%=12.4年となり、端数を切り捨てて12年です。新品なら22年かけて償却するところが、12年で済みます。
車も同じ考え方です。中古の普通乗用車(新品の法定年数6年)を4年落ちで買った場合は、(6-4)+4×20%=2.8年となり2年。法定年数をすべて過ぎた6年落ち超の車なら6年×20%=1.2年ですが、2年未満は切り上げて最低2年となります。
| 資産 | 新品の法定年数 | 簡便法の年数 |
|---|---|---|
| 木造アパート(築12年) | 22年 | 12年 |
| 普通乗用車(4年落ち) | 6年 | 2年 |
| 普通乗用車(6年落ち超) | 6年 | 2年 |
簡便法で出した年数は、その中古資産を事業に使い始めた事業年度の申告で採用するのが原則です。翌期以降に「やっぱり簡便法で」と後出しはできないので、取得した期に忘れず反映する必要があります。
簡便法が使えないケース
年数を短くできるからと飛びつくと、足をすくわれる場面もあります。中古で買った後に、その資産を使えるようにするための大きな改造・修理(資本的支出)を加えた場合です。
- 資本的支出の額が、その中古資産の取得価額の50%を超えるとき → 簡便法は使えず、見積法のみ
- 資本的支出の額が、その資産を新品で買った場合の価額(再取得価額)の50%を超えるとき → 簡便法も見積法も使えず、新品の法定年数
つまり、安い中古を買って多額のリフォームを重ねると「実質新品」とみなされ、短い年数のメリットが消えるわけです。Kさんのアパートも、取得後に大規模改修を予定しているなら、この50%基準を先に確かめておく必要があります。もう一つ、建物は「用途」で法定年数が変わる点にも注意が必要です。同じ建物を2つ以上の用途に使う場合、原則は全体を主たる用途の年数で判定します。
この記事のまとめ
- 中古資産は新品と同じ年数で償却する必要はなく、簡便法で耐用年数を縮められる
- 簡便法の計算は取得した期の申告で採用する(後出し不可)
- 多額の資本的支出があると簡便法が使えなくなるため、50%基準を事前に確認しておく
税理士として、私が思うこと
中小企業の設備投資に向き合う中で、中古資産の耐用年数は「知っているかどうか」で手残りが素直に変わる論点だと感じています。決算の場で「その車、簡便法なら2年ですよ」とお伝えしたときに、表情がふっとやわらぐ瞬間が浮かびます。
この制度が見落とされやすいのは、「中古=新品より安い」という値段の感覚だけで判断が止まり、耐用年数という別の軸に目が向かないところにあると感じています。地味な論点ほど、知らないままだと損が積み上がっていきます。
※本記事の設例は、相談現場でよく見られる構造をもとに整理したフィクションです。特定の顧問先・個人を示すものではありません。